着崩した制服がうざくて仕方がない。慣れないし慣れたくない。
ちらちらと視界に入る青にどうしようもなく苛いてしまう。
彼らは悪くない。異色なのは俺なのだから。
だがそれでも苛立つ気持ちは抑えられなくて、自然と舌打ちをしてしまう。

俺が生き残る唯一の方法。
それは対極となる青の炎で、体内の赤の炎を制御することだった。
赤の炎の性質である【暴力】を青の炎の性質の【制御】で抑え込む。
そこまでしてやっと俺の身体はまともに機能するようになった。
だけど素直には喜べない。
もうあれから4年近くたったのに、俺は今だに身に纏う青い制服が馴染む気がしない。
以前所属していた情報課や現所属の特務隊のメンバーは皆優しいしいい人だ。
年下の俺が上司でも文句ひとつないし、それどころか気遣ってくれる時すらある。
最初のうちは表面的なものではないかと、裏では何を言われているか分からないと思っていたが、彼らの眼差しから感じるものがそうではないと理解してからは疑うのをやめた。
それでも嘗ての宿敵だという認識が消えずにいる。
大好きだった…今も変わらず大好きな吠舞羅の敵対組織。そこにいる自分が信じられない。信じたくない。
でも俺はこの道を選ぶしかなかったのだ。










「吠舞羅を裏切れって言うんですか…」

セプター4に入るよう言われた俺が返した言葉は、思った以上に低くて自分でも驚いたのを覚えてる。











「生きるためにあんたの力は受ける。でもそれだけだ。心はやらない。俺の心と誇りは、一生吠舞羅のものだ」

まっすぐ見つめた先にある青の王の顔が含み笑いで歪む。
沸き上がる嫌悪感を抑えてその手をとったのがまるでつい最近の事のようで。








「なんで裏切った…!!」

薄暗い路地裏。
怒りで歪む美咲の顔を見ているのが辛くて。
理由は明かせない。言えば美咲は悲しむ。
誇りの赤い炎のせいで死にかかってるだなんて、言える訳がなかった。
だから焼いた。美咲と同じ位置にでた、大好きな吠舞羅の誇りの証を。
美咲が俺の嘘に気づかないように。追いかけてこないように。

「てめぇ…ぶっ殺してやる!!この裏切り者がぁ!!!」






痛いよ美咲。あれからずっと。
きっとこの痛みはずっと無くならない。無くしちゃいけない。

だってこれは罰だから。
鎖骨の痛みも、美咲に裏切り者だと言われる時の、心の痛みも。
俺が一生背負っていく、罰なのだから。



END