猿比古くんが小さくなっちゃう話




「みしゃき、抱っこ」
「あ?たくっ、しょうがねえな。ほらよ」
「みしゃき、あんま大きくない」
「んだと!?」
「だって、いずもより大きくない」
「比べる対象が不利すぎるだろうが!!」

なにあれかわいい。
Bar.HOMRAに入り浸る、カラーギャング吠舞羅のメンバーの心の声が完全一致した瞬間だった。

伏見猿比古が任務中、追っていたストレインに不意を付かれ、能力により推定3.4歳の姿に変えられたのは、ほんの2時間前のことである。
セプター4で子供を預かれるわけがなく、緊急処置として、その場で居合わせた吠舞羅で預かることになった。
余談だが、宗像と淡島含めたセプター4主要メンバー、別称伏見猿比古親衛隊は猛烈に反対したが、草薙の筋の入った説得に渋々引き下がったのは言うまでもない。

中身まで幼児になっている猿比古が懐いたのは今のところ美咲のみで、小さくなっても猿比古は猿比古だと皆が納得し、傍観もとい、微笑ましく見守る状態が続いている。
懐かれた当人の美咲は、最初こそ子供の扱いが分からず戸惑っていたが、反射的に怒鳴っても、普通の子供のように泣き喚かないのが幸いして、仲良く(?)できている。

「見た目は天使なのに、このふてぶてしさは正に伏見やな」
「サルヒコ、私も抱っこしたい」
「いや、アンナには無理だろ」
「………………」

アンナがジッと美咲を見つめる。
若干恨めしく感じるのは気のせいだと思いたい。

「アンナ、ソファ座り。それなら大丈夫やろ?八田ちゃん」
「まあ…そっすね」

言われた通りソファに座ったアンナの膝の上に、美咲がゆっくりと猿比古を降ろす。
「う?みしゃき?」
「あー、いいから大人しくここ座れ。いいな」
「サルヒコ」

首を傾げる猿比古は頭上から聞こえた名前に顔を上げる。
「…真っ白」
「うん。私はアンナ」
「あ、んな?」
「そう」
「あんな、きれー」
「ありがとう。サルヒコはかわいい」

なにあれ超かわいい!!
吠舞羅のメンバーの心が以下略。

アンナの髪を触り楽しそうな声をあげる小さな猿比古。
その様子を常の無表情を僅かに崩し、小さく微笑むアンナ。

ここが楽園か。

草薙はタンマツをビデオカメラモードに。
十束はカメラを構えて既に撮影に入っている。
手持ち無沙汰になった美咲は、少し離れた所でその様を見ていた。

小さい猿比古は美咲以外が抱こうとすると、金切り声をあげて嫌がった。
まともに抱けたのは、セプター4から預かる際に抱えた草薙ぐらいで、それ以外の誰にも触られるのを極端に嫌ったのだ。
草薙はBarの仕事があるため、仕方なく美咲が相手していたのだが、どうやらアンナも大丈夫だったらしい。
美咲が遠く離れた今でも、楽しそうにアンナの膝の上にいる。

なんだよ…くっそ、猿のくせに。
胸の中に広がるもやもやしたものの正体に美咲が気づくのは、もう少し先のお話。





おまけ

セプター4の場合

「ひもり」
「はい、何ですか?伏見さん」
「ひもり、め、ひとつだけ?」
「大丈夫です。髪に隠れてるだけで、ちゃんと両目ありますよ」
「みたい」
「え、ちょ、伏見さん!?」


「秋山…なんて羨ましいんだ…!」
「全くだ。1人で小さい伏見さん独占するなんて」
「秋山にしか懐かなかったんだから、しょうがないだろ」
「しかも名前呼び…秋山のくせに!」
「ところで、あそこで倒れて涙の池作っているのは、認めたくはないが室長だよな?どうしてああなったんだ?」
「さっき伏見さんを抱っこしようとして、思いきり拒否されたらしい。さわんな気持ち悪いって」
「うわ…それはかわいそうに」
「でも確かにあれは気持ち悪かった。鼻息荒いし涎垂れてたし」
「室長…………」

「あ、おい、副長が何か持って2人に近づてくぞ」
「あ、あれは…!!」
「ちょ、あんな凶悪なモノ幼児に食べさせる気か!!!」
「そういえばさっき、せりおねえちゃんって呼ばれて上機嫌で出て行ったのは見たけど…、まさかあれの準備だったとは」
「おい、誰か止めろ!!!」





上から、日高、弁財、榎島、日高、五島、布施、弁財、道明寺、的なイメージ。
まだ青本読めてないからあくまでイメージです。

セプ4では秋山と淡島副長にしか懐かないショタ比古くん。
室長は構いたくて仕方ないけど、全力で拒否られて本気で落ち込む。
みたいな。

副長が持ってきたのは言わずもがな。
この後秋山くんがなんとか断ろうとして逆に被害者になるんだろうな。


おしまい